理学部情報科学科 3回生 154番 安堵 浩美
『ネットワーク技術の歴史と展望』
1) インターネットの歴史と現状
+どのような経緯でインターネットが発足したか
+そのようなアプリケーションとユーザを巻き込んでインターネットが普及したか
Internetとは何か(野島久雄・NTT基礎研究所)
インターネットは1969年頃からアメリカで開発された計算機同士を接続するネットワークである。日本では、80年代の後半から大学を中心にして広まり、ここ数年の間に急速に一般化してきた。全世界でインターネットを利用できる人の数は推計で4000万とも言われており、日々増大しつつある。インターネットを利用することによって次のようなことが容易にできるようになる。
(a)海外の知人との間での電子メールの交換
(b)電子メールのグループに参加することによる研究者コミュニティでの情報の流通
(c)公開の掲示板を利用することによる不特定多数とのコミュニケーション
(d)遠隔地にある計算機上で行われているサービスへのアクセス
近年、計算機技術と通信技術が格段に進歩したことによって、上のような各種のサービスが文字だけではなく、音声・画像(動画を含む)などのマルチメディアで利用できるようになった。また、ネットワーク上で利用できる各種の情報も多様化したばかりでなく、容易に利用できるようになった。心理学や教育学の研究者にとってもこうしたインターネットという新たなコミュニケーションメディアは、情報源として有効に使えるようになってきた。また、この上で展開される人のコミュニケーション自体も研究の対象となっていくと考えられる。
(http://www.nime.ac.jp/%7Eohnishi/EduPsy/inet-history.html)
第2世代のインターネット整備(新潟大学附属図書館 済 賀 宣 昭)
1.はじめに
冷戦最中の1957年,米国国防総省は旧ソ連の最初の人工衛星スプートニクの打ち上げに対して高等研究計画局(ARPA,現在のDARPA)を設立した。このARPAが核戦争等の有事に強いネットワークを開発するため,インターネットの前身であるArpanetの実験を開始したのが1969年である。この年が俗にインターネット開始の年とされ,今年はそれから数えて丁度30年目にあたる。この年はまた,米国AT&T社のベル研究所においてUnixの開発が始まり,アポロ11号が月面着陸に成功し,スプートニック・ショック以来米国の科学技術が威信を取り戻した時期でもあった。一方,VintonCerfらがインターネットの通信手順であるTCP/IPプロトコルの詳細についてまとめた「AProtocol for Packet Networking Internetworking」を出版したのが1974年であり,カリフォルニア大学バークレー校でBill JoyがTCP/IPをバークレー版Unix(4.2BSD)に載せたのが1982年,TCP/IPが国防総省標準プロトコルとなったのが1983年である。ということからすれば,インターネット本来のスタートはこの年に当たるであろう。
TCP/IPの開発が始まった1974年は,Arpanetを開発したBBN社が公衆パケット交換網サービスのTelnetをArpanet の民営版として開始した年でもあり,日本では大学において科学研究費補助金による「広域大量情報の組織化」という大型プロジェクトの中で大学間コンピュータネットワーク(俗称N−1ネット)の開発が始まり,NTTがDDX−P網(パケット交換網)の運用を開始した年に符合する。インターネットはこうした創生期を経て,初期段階の整備を終わり,米国で始動した次世代のインターネット技術開発プロジェクトに代表される第2世代の整備段階に入った。そこでその状況を述べるとともに,日本における対応についても概観したい。
2.米国における第1世代のインターネット整備
インターネットの創生期に果たした米国立科学財団(NSF:National Science Foundation)の役割は大きい。Arpanetは当初軍事用であったため,利用範囲は限られていた。1981年にArpanetに参加出来ない組織のために,Arpanetと同様の電子メール・サービスを提供するCSNET(Computer Science Network)がスタートしたことはこれを物語っている。
1986年にNSFの資金提供によりNSFnetが開発され,これを通じて民間研究機関や大学などからもインターネットが利用できるようになった。ただし,政府資金により運営されたため,AUP(Acceptable Use Policy)という基準により利用は研究・教育目的の非営利利用に限定されていた。しかし,このNSFnetの運用開始は,1989年のソ連解体と東西冷戦の終結による米国産業政策の軍事から民生への転換と相まって,インターネットを一般利用へと大きく発展させた。また,全米各地にCERFnet(カリフォルニア州サンディエゴ)やSURAnet(メリーランド州)などの地域ネットワークが発展し,NSFnetはこれらを相互につなぐバックボーンネットワークとしての役割も演じ,1980年代後半から1990年代にかけてインターネットのバックボーンを支えたのである。
1990年代に入ると地域ネットワークが次々民営化され,1990年1月に設立されたバックボーン・ネットワークを自前で提供する最初の商用プロバイダー(ISP:Internet Service Provider)であるPSI(Performance System International Inc.)をはじめとして,急速に商用インターネットが普及した。このISPによる商用インターネットの高まりは,NSFnetは使命が終わったとして,1995年4.30その運用を終了に追い込んだ。これを境に米国におけるインターネットのバックボーンが全て民間セクターで運営されるようになった。一方NSFはNSFnetを引き継ぐ形で,米長距離通信大手のMCI Communications社と2000年までの5年間の契約を交わし,共同でvBNS(very High-performance Backbone Network Service)を構築して,155MbpsのATMセルリレー[1]を利用したバックボーンサービスを開始した。
1996年にはこれを622Mbpsに高速化するとともに,高度なネットワーク関連研究を進める約100機関の組織に開放した。この間インターネットに接続されるホストコンピュータの数は,3.5ケ月で2倍,1年で10倍という勢いで増加しており,この急増は「インターネットの法則」とも呼ばれる。図1に見るように1999年1月時点で4,000万台を超え,日本においては170万台近くに達している(これは米国に次いで世界第2位であるが,人口10万人当たりのホスト数では第22位になる)[2]。利用者も今や世界で2億人,米国で5,000万人,日本でも1,200万人(全人口の約10%)を超えるほど急増している。
3.米国における第2世代のインターネット整備
1993年クリントン政権がNII(National Information Infrastructure)構想を発表した当初は,通信インフラとしてインターネットはその1つのプロトタイプであったが,米国政府もインターネットの発展を眼の当たりにして,インターネットこそが国家情報基盤の本命であると認識するに至り,産官学あげての次世代インターネット技術の開発を推進すべきとのコンセンサスが急速に広まった。一方,商用インターネットに加入した大学等の研究者の間には,民間トラフィックの急増で不満が生じていた。このような動きの中で,通信インフラの第2段階の整備期に入っていった。
3.1 Internet2 プロジェクト
今日のインターネットは研究開発の要求を十分満たしているか,そうでないとすれば何をなすべきか,1995年9月大学関係者がサンフランシスコの南方
Montereyに集まり,商用インターネットへの不満を表明するとともに現状のインターネットの問題点について議論された[3]。その主なものは,
1)研究・教育機関にとって接続料金が高い,
2)QoS(Quality of Service)4)が必要なアプリケーションに対し,それを保証する仕組みがない,
3)双方向のリアルタイムビデオ環境の整備が必要,などである。
その後1996年10月に大学関係者のorganizing
meeting(イリノイ州)に34の大学担当者が参加し,次世代のインタット技術とアプリケーションの研究開発を行うInternet25)の発足を決定した。1997年10月大学関係者は,
Internet2 を大学主導で進めるため,UCAID(University
Corporation for Advanced InternetDevelopment)6)という非営利団体を結成し,正会員資格を大学のみに与えることとた。UCAIDの正会員は現在約140大学であり,その年会費は25,000ドルである。Internet2プロジェクトの根底には大学における自由な研究こそが今後の米国の繁栄の基礎であり,そのために大容量の教育・研究用ネットワークの整備が必須との社会的合意がある。このプロジェクトは,IP
over ATM のvBNS ProjectとIP over SONET7)
のAbilene Projectに分かれる。
(http://www.lib.niigata-u.ac.jp/%7Esaiga/html/internet2.html)
インターネットの経緯と特徴
インターネットの原型は1970年代にアメリカで研究開発されたARPANETで、軍、大学、研究機関などのコンピュータを網目状に接続しネットワークすることで、敵の爆撃を受けても全体の機能が失われないネットワークの構築を目的として開発された。その後、TCP/IPプロトコルがUNIXワークステーションに採用されたことで1980年代には世界中の研究機関、大学などに普及し、当初は電子メール、ファイル転送、遠隔計算機利用、ダイアルアップ利用などがおもなセービスであったが、1990年代にはいり商業利用サービスやプロバイダによる接続サービスが開始され1994年以降はMOSAIC,NETSCAPEなどのWWWブラウザの普及でホームページによる情報発信・検索が広まり、会社や一般家庭の利用数が急速に増え現在に至っている。インターネットは、その広域、高速、経済性を特徴とし、世界規模でネットワークが構築されている。それらを可能にした理由のひとつとして、複数の通信技術(イーサネット、FDDI(*7)、X.25パケット交換網、ISDN(*8)、専用線)を相互に接続、統合し、異種の通信媒体に接続されているホスト間同士で低いプロトコル層での違いを意識することなく相互に通信を可能としたことがあげられる。(http://www.met.mach.mieu.ac.jp/homepage2/tech/kousyuukai/network2.html#INTE R1)
+現在のインターネット技術のサーベイ
インターネットサーベイとは、インターネットの調査ではなく、インターネッ トを使った調査。検索エンジンをサンプリングとみなして、実データと比較す る。結果として世の中に出ているサンプリングデータの正当性を証明する。 また、インターネットで最近生まれた子供のランキングなどを調べられる様にする。(http://www.ep.u-tokai.ac.jp/~takahiro/kenkyu.html)
+モーバイル・コンピューティングの調査
無線LANが実用化されると、屋外や車内でノート型パソコンや携帯情報端末を計算機ネットワークに接続することができる。このようなことが可能になると色々な利点があるであろう。実験で他の大学や幼稚園等に出向く時に、実験用のプログラム等をノート型パソコンのハードディスクに入れて行く必要がない。また、データも直接ファイルサーバに書き込むことができる。さらには、実験現場でデータ解析までできてしまう。屋外での調査などの時、図面を持って行く必要がない。必要な資料はサーバからとればよい。もちろん、これらのことは高性能のノート型パソコンでも可能であろうが、ネットワークにつながっていれば、ハードディスクに必要なものを詰め込む必要がないので、実験現場で必要なものを持って来るのを忘れたなどという悲しい事態を避けることができる。また、ハードディスクが不要なので、端末自体を軽量化できる。そういう意味で心身ともに楽になることが期待できる。 (http://www.nime.ac.jp/%7Eohnishi/EduPsy/Future/mobile.html)
2)ネットワーク技術の展望
+列島縦断型ギガビットネットワークの構築
二十一世紀をリードするマルチメディアの技術を開発する北九州情報通信研究開発支援センターの開所式が四月二十六日、北九州市小倉北区のアジア太平洋インポートマート(AIM)ビルであり、郵政大臣の時全国三ヵ所のうち一カ所として北九州市に設置を決めた私も出席、次世代のマルチメディア社会実現の夢をふくらませました。
この支援センターは、郵政省が進めているギガビット列島縦断ネットワーク整備計画の中枢を占め、総事業費五百七十三億円。北九州市の支援センターは施設設備だけで五十億円を投入最新鋭のコンピューターを備えた六つの実験、研究設備を持っています。 実験、研究設備は、五年間、企業、大学、研究機関、自治体などに開放、離島と映像で結んだ遠隔医療、いながらにして全国の美術館の名画が鑑賞できる電子美術館、自宅でショッピングをして代金まで決済できるオンラインショッピングなどマルチメディアの広範多彩な利用を研究開発していきます。 ギガビットはやがてアメリカの一00都市を結ぶ光ファイバーのネットワークと直結、支援センターができたことで将来北九州市は国内だけでなく、世界的な情報通信の基地になります。しかもベンチャー企業など新しい企業も生まれて産業構造を転換、情報通信の街として再生すると期待しています。(http://www.qbiz.ne.jp/jimi/list/123.html)
郵政省の「列島縦断型研究開発用ギガビットネットワーク」の接続装置の設置 について
1.接続装置の設置について
県では、郵政省の平成10年度新規事業である「列島縦断型研究開発用ギガビットネットワーク」の整備事業について、郵政大臣の認可法人である通信・放送機構(以下「機構」という。)に対し、ギガビットネットワークの接続装置の(株)富山県総合情報センターへの設置を申請しておりましたが、このたび同センターへの設置(予定)が決定しましたので、お知らせします。なお、次の2のとおり、ギガビットネットワークは研究開発のために大学、研究機関、企業等に広く開放されるものであり、本県への接続装置の設置後は、県内の大学、研究機関、企業等は接続装置まで接続することにより、全国の他の大学、研究機関、企業等との間でギガビットネットワークを活用した研究開発が可能となります。
2.列島縦断型研究開発用ギガビットネットワークについて
「列島縦断型研究開発用ギガビットネットワーク」とは、全国規模の研究開発用大容量超高速ネットワーク(1ギガビット(注)/秒 級)として機構が整備し、接続技術、高度アプリケーション等の研究開発のために、大学、研究機関、企業等に広く開放されるものです。(注)1ギガビット≒1,000メガビット≒10億ビット。1ギガビット/秒は標準テレビ放送約171チャンネル分の伝送が可能。(http://www.pref.toyama.jp/sections/1013/gigabit/)
全国縦断型研究開発用ギガビット・ネットワーク
郵政省が計画する列島縦断型のギガビットネットワークで,郵政省の認可法人「通信・放送機構」(TAO:Telecommunications Advanced Organization of Japan)が設計・整備するオープン・テストベッド(開放型実験施設)であり,通称TAO Projectと呼ばれる。各地のネットワーク保有者(CATV,防災行政無線等)や,大学,研究機関,行政機関,地方自治体,企業等に広く開放し,超高速通信技術や高度アプリケーションの研究開発を行う。ネットワーク構成の概要を図5に示すが,ATM交換設備を全国10カ所(札幌,仙台,つくば,長野,名古屋,金沢,けいはんな(関西文化学術研究都市),岡山,高松,北九州)に設置し,研究開発の拠点となる開放型研究開発センターである共同利用型研究開発施設(光通信共同開発センター)をつくば,けいはんな,北九州の3カ所に設ける。新潟大学は,長野のATM交換機に接続される予定である。1998年度の補正予算により向こう5年間の回線料を含む総額510億円が措置され,アクセス回線料は実験参加者が負担することとしている。 (http://www.lib.niigata-u.ac.jp/%7Esaiga/html/internet2.html)
+高度道路交通システム(ITS)
ITSとは、最先端の情報通信技術を用いて人と道路と車両とを情報でネットワークすることにより、交通事故、渋滞などといった道路交通問題の解決を目的に構築する新しい交通システムです。
ITSは、ナビゲーションの高度化、自動料金収受システム、安全運転の支援などの9つの開発分野から構成されています。ITSは、マルチメディア事業の中で有望性の高い事業と評価されており、その効果は全体で50兆円(VERTIS試算)と試算されています。※ITS:Intelligent Transport Systems
ITSと国民生活の係わり
ITSは、国民生活に不可欠な道路交通の高度情報化であることから、その展開に応じて、我が国の国民生活は安全性や快適性の面で大きく向上していくことが期待されます。21世紀に向けてITSと国民生活の係わりは、以下のように想定されます。
1)第1フェーズ(2000年頃) 「ナビゲーションシステムをはじめとする一部先行システムのサービス開始」
〜ITSのはじまり
ITSの創生期にあたるこの時期は、すでにサービスが開始されているVICS等による交通関連情報の提供により、渋滞情報や最適経路等がナビゲーションシステムに表示され、ドライバーは移動時間の短縮等、快適な移動が享受できる。また、第1フェーズの後半には、自動料金収受が開始され、料金所での渋滞が解消されはじめる。
2)第2フェーズ(2005年頃) 「各種利用者サービスの開始」
〜交通システム革命
21世紀にあたるこの時期は、ITSの様々な利用者サービスが順次導入され、交通システムの革命が始まる。ITSにより利用者に提供される情報は、目的地に関するサービス情報、公共交通情報など、その情報内容が拡充され、一層の利用者サービスの向上が図られる。例えば旅行を計画する際に、利用者のリクエストに応じた魅力的な目的地を検索し、所要時間等を勘案した到着までの最適な経路、交通機関等が容易に選択可能となる。 また、ドライバーの安全運転の支援と歩行の安全性向上により、高速道路、一般道路における交通事故の減少が図られる。交通事故等が発生した場合においても、迅速な通報と交通規制により、被害の拡大が防止され、緊急・救援活動の迅速化と合わせ、従来であれば命を落としていたかもしれない人々を救う。 一方、公共交通機関の定時性の確保と情報サービス等の充実により、公共交通の利便性は飛躍的に向上する。また、輸送事業の業務等に関する効率化が図られ、物流コストの低減等により国民は利益を受けはじめる。
3)第3フェーズ(2010年頃) 「ITSの高度化と社会制度の整備」
〜自動運転−夢の実現
ITSの高度化にあたるこの時期は、インフラの整備と車載機等の普及に加えて、ITSを社会システムとして定着させるための法的、社会的制度の整備も行われ、ITSによる効果は、広く国民全般に行きわたる。また、さらに高度な機能の実現により、これまでは夢とされていた自動運転が本格的にサービスを開始し、車内は安全で快適な空間となる。
4)第4フェーズ(2010年頃以降) 「ITSの熟成」
〜社会システムの革新
本構想の最終期にあたるこの時期は、ITSの全てのシステムが概成するとともに、光ファイバー網の全国整備などによる高度情報通信社会の本格的到来により、社会システムの革新が行われる。 この時期には、自動運転の利用者が増大しはじめ、一般的なシステムとして定着しはじめるなど、ITSに関しても熟成の時期を迎え、ITSは道路交通ならびに交通全体に係わる基本的なシステムとして広く国民に受入られている。これにより、交通事故による死亡者数はモータリゼーションの進展にも係わらず、現在よりも大幅に減少することが期待される。また、都市部をはじめとした道路等の渋滞は緩和され、快適で円滑な移動が可能となる。さらに、業務交通量の低減により沿道環境、地球環境との調和が図られる。 (http://www.hido.or.jp/ITS/IT/IT.htm)
+次世代携帯電話システム(IMT-2000)
IMT−2000は、世界中どこでも利用可能な次世代携帯電話システムとして、国際電気通信連合(ITU)が2000年頃の開始を目指し、世界統一規格の策定を提唱しています。 日本においては、2001年の導入に向け、電波産業会(ARIB)と電信電話技術委員会(TTC)が、各々無線方式とネットワーク方式の国内標準化作業を進めていますが、本年6月のITUへの無線方式提案に向け日本が推進しているW−CDMA方式と同じ方式が、欧州提案方式としても本年1月末に採択されたところです。 KDDは、ARIBと協力して、このW−CDMA方式と米国が開発しているWideband cdmaOne方式の一本化に向け努力を続けています。 KDDは、今般の「IMT−2000推進室」の設置により、将来の新たな収益基盤として期待される次世代携帯電話事業への参画に向けた取組みを強化していくとともに、今後、本格的に展開していく国内通信事業の足回りとしての活用や、事業領域の拡大に向けた魅力あるサービスの企画・開発を推進していきます。なお、KDDは、ARIB方式に沿って実証実験システム開発を進めており、本年夏からフィールドトライアルを開始する予定です。 (http://www.kdd.co.jp/press98/98-017.html)
+成層圏プラットフォーム
成層圏プラットフォームとは、気象が比較的安定している高度20km程度の成層圏に通信機材等を搭載した無人の飛行船を滞空させ、通信・放送の中継基地等に利用するもので、次世代情報通信基盤として期待されている。また、観測センサー等を搭載することにより、地球観測にも利用可能となることから、幅広い用途への応用も期待されている。 郵政省及び科学技術庁では、成層圏プラットフォームの通信・放送、地球観測への早期応用を目指し、産学官共同で研究開発を行っている。郵政省の関連では、通信・放送機構が10年8月、成層圏プラットフォームプロジェクトを発足させ、プラットフォーム追跡管制の研究開発及びKa・ミリ波帯を利用した通信・放送アプリケーションの研究開発に着手した。 (http://www.shiba.tao.go.jp/JGN/)
+ギガビット通信衛星
+情報スーパーエクスプレス構想 21世紀型サイバー社会の早期実現を図るためには、生活・産業・行政分野全般にわたり、先進的な情報通信技術を活用した高度な情報通信アプリケーション必要となるインフラ等を多層的に一定の地区へ先行導入することにより、これらの社会ニーズや有効性等を検証することが必要である。このため、郵政省では、このような先行地区の構築に向けて、10年2月から「情報スーパーエクスプレス構想の実現に向けた懇談会」(通信政策局長の私的懇談会)を開催し、詳細な検討を進めているところである。
(http://info2.mpt.go.jp/policyreports/japanese/papers/98wp3-2-9.html)
(http://info.mpt.go.jp/policyreports/japanese/papers/index-98wp.html)
〜情報スーパーエクスプレス構想の実現に向けた懇談会報告書〜
郵政省では、21世紀型サイバー社会の早期実現を図るために、本年2月から「情報スーパーエクスプレス構想の実現に向けた懇談会」(座長:長尾真京都大学総長)を開催し、検討を進めてまいりましたが、本日その報告書が取りまとめられました。 21世紀型サイバー社会の早期実現を図るためには、生活・産業・行政分野全般にわたって先進的な情報通信技術を活用した高度なアプリケーションや必要となるインフラ等を多層的に一定の地区へ先行導入することにより、諸課題の整理、社会ニーズや有効性の検証を行うことが必要です。 そこで、本懇談会においては、モデル地区において、このようなアプリケーション、技術及びインフラを多層的に導入する「情報スーパーエクスプレス構想」の実現に向けて、具体的な実施方策等について検討を行いました。報告書のポイントは以下のとおりです。
(1)短期的方策(先行地区での実験)
(2)中長期的方策(全国普及策)
(http://www.mpt.go.jp/pressrelease/japanese/tsusin/980702j501.html)
+電子マネー技術の現状
1.1 電子マネーはなぜ生まれたのか?
インターネットを使って買い物をしたり、取引をする場合、注文はオンラインで行なって、支払いは直接銀行で行なう・・・なんていうのは大変面倒なことである。このようなeコマース(電子商取引)においては、商品の購入と代金の支払いが同じネットワーク上で完結できることが望まれる。また、ふつうのお店での買い物でも、いちいちお釣りの準備の為に細かい小銭を持ち歩くのはわずらわしく、できれば身軽に買い物をしたいものである。このような日常生活における「利便性の向上」を目指して考案されたのが、「電子マネー」なのである。現在、私達が実際に買い物をする場合、いろいろな支払手段が存在している。代表的なものとしては、お札や小銭のような現金であるが、この他にもクレジットカードやプリペードカード、小切手、銀行の口座から口座への振り込みなどさまざまである。電子マネーはこれらの決済手段をネットワーク化、電子化し、電子的な決済を実現しようとしているのである。
1.2 電子マネーの利点とは?
前節で述べたとおり、電子マネーはネットワーク化が進む現代社会における、現金などの支払手段の不便さを改善する為に生まれたものである。電子決済による利便性の向上を目指した電子マネーには以下のような利点が挙げられる。
@ネットワーク上で色々な処理が利用可能支払い、譲渡、引き下ろし、預け入れなどの処理をすべてネットワークを経由して行なえるようになる。従って、eコマースなどでの買い物の支払い使える事はもちろんのこと、自宅にいながらにして、銀行口座から必要な金額を電子マネーの形で引き下ろすことが可能になる。さらに各店舗では、電子マネーでの売上金をネットワークを経由して銀行に預け入れることができる。
A盗難、紛失時の危険性の低減電子マネーを収納するICカード、つまり電子財布は、利用者のパスワード等がなければ使うことができないようになっているので、他人が自分の電子マネーのデータを納めたICカードを拾ったり、また盗んだりしても、それを使うことは非常に難しいのである。さらに、電子マネーのデータの全体もしくは一部のバックアップを取っておくことにより、紛失時及び盗難時にクレジットカードのように、その電子マネーの無効申請をして使用できなくするようにもできる。
B匿名性(プライバシー)が守られているクレジットカードなどと異なり、個人情報が暗号化されてやり取りされたりするので、利用者の匿名性が守られるようになっている。
C決済のコストが安い通常、クレジットカードによる決済では、1回あたりの利用での決済コストは比較的高く少額の決済にはあまり向いていないと考えられている(実際、一定金額以下の買い物をクレジットカードで支払うことはできない)。それに対して、電子マネーはかなり安価な運用コストで実現できるようなので、少額の決済やさらにマイクロペイメントといった超少額(数円程度)の決済に対して適している。ただしこれは電子マネーの実現方式に依存する。
Dオープン性であるクレジットカードで決済を行なうためには、利用者及び小売店はあらかじめ特定のクレジットカード会社と事前に加盟契約を行なっておく必要があるが、電子マネーは原則として日本中どこでも利用可能である。
E譲渡性があるクレジットカードやプリペイドカードでは、カード保有者から別のカード保有者へ価値を譲渡することはできないが、電子マネーではそれが可能である。
1.3 電子マネーは通貨なのか?
以上の事柄から、電子マネーは支払い手段を電子的に行おうとするもの、つまり電子決済を実現するものであり、またそれは今までの決済手段にはない、多くの利点を持った、まさに「未来の新しいお金」のように思われる。しかし、電子マネーとは本当に新しい通貨といえるのだろうか?それとも違うものなのか?という疑問が出てくる。この問題は電子マネーの概念を定義する上で大変重要なことである。まず、辞書によると通貨とは「強制通用力を有する貨幣の意(広辞苑)」と定義されており、法的には「貨幣および日本銀行法第29条第1項の規定により日本銀行が発行する銀行券をいう(新貨幣法)」と定められている。さらに言えば、通貨とは以下の3つの条件にによって定義されている。
@決済手段になりうる・・・・・交換媒体
A価値の比較基準となりうる・・価値尺度
B価値の保存手段となりうる・・価値保存
これらの条件を満たしているれば、電子マネーは通貨であるといえるわけである。しかしながら現在の段階では、実際にはこれら3つの条件の中で最も基本となる@の条件すら、ほとんどの電子マネーが満たしていないのである。「決済手段になりうる」とは、世の中のほとんどの人が、その電子マネーを受け取ることで「決済を完了した」と実感できなければならないことを意味する。ところが、現在の各種電子マネーは、そもそも特定のお店への支払いにしか使えず、個人間の支払いに使用することは不可能であるケースが多い。また、お店に電子マネーで支払いを行なった場合、お店側としてはそれで代金の回収が完全に終ったとは実感しておらず、後で電子マネーを発行している銀行やクレジットカード会社等から「本当のお金(=リアル・マネー)」を受け取った段階(自分の預金口座にお金が振込まれることが多い)ではじめて回収が終ったと実感することになる。要するに現在は、電子マネーは単体では交換媒体という決済手段としての機能を果たし切れていないのである。Aの価値尺度、Bの価値保存といった@の交換媒体に付随した条件についても、やはり電子マネー単体ではこれを満たすことはできず、電子マネーがいつもリアル・マネーと1対1の比率で交換できるというような前提条件がある場合においてのみ、価値尺度や価値保存の手段としての機能を果たすことができる状態であり、まだまだ通貨と呼ばれる段階ではないようである。さて、以上のことから電子マネーは、通貨と言えるほどのものではないと言うことができそうである。そこで、電子マネーを決済の仕組みの観点から見直してみると、そもそも決済とは、企業や個人の間に取引等によって発生した債権・債務関係がある場合に、それと同等の経済的価値を有する何らかのものを、債務者から債権者へ移転させることによって、その債権・債務関係を解消させるという行為である。ここで、経済価値を有する何らかのものを「決済手段」、これを移動させ、決済を完了させることを「決済方法」と読んで区別することができる。決済手段には大きくわけて2種類のものが存在する。それは「現金通貨」と「預金通貨」である。現金通貨とは、我々が日常生活において使用している紙幣や硬貨のことである。一方、預金通貨とは銀行預金や郵便貯金のことである(広い意味で・・)。決済方法には、現金通貨を直接手渡すことのほかに、相手に最終的に預金通貨(場合によっては現金通貨)が引き渡されることを目的とした、小切手やクレジットカード、プリペイドカード、振り込みや振り替えの利用といった種類がある。現在実験されている電子マネーのプロジェクトのすべては、これら既存の各種決済方法と電子化技術とを組み合わせた応用型とみなすことができるのである。すなわち、現在の電子マネーは、現金通貨や預金通貨に代わる新たな決済手段をつくり出しているわけではなく、現金通貨や預金通貨という既存の決済手段を移動させるための仕組みを、電子的にさまざまな方法で実現しようとするものである。また、電子マネーは、決済が完了するために必要な信用力を、ドルやポンドなどの現金通貨や預金通貨といった既存の通貨に依存しており、独自にこれを創造しているわけではないのである。そのようなわけで、電子マネーは「新たな通貨」ではなく「新たな電子決済方法」であると定義できるのである。
第2章 電子マネーの現状
2.1 電子マネーの分類
さて前の章において、電子マネーは決済手段を電子的に移動する「新たな電子決済方法」であると定義できたわけだが、その方法によっていろいろな種類がある。それらは大きく分けて、以下の4つに分類することができる。
@プリペイドカード型(プリペイドカードの機能を向上したもの)
Aクレジットカード応用型(クレジットカードの利用を電子化したもの)
B預金通貨利用型(預金通貨を決済手段に利用して移動させるもの)
C現金通貨模倣型(現金通貨を手渡すような決済を模倣しようとするもの)
またこれ以外にも、電子マネーの流通形態に着目した、「オープン・ループ型」と「クローズド・ループ型」という分類方法もある。これは、プリペイドカード型と現金通貨模倣型のように、ICカードやパソコン等の中に電子マネーの残高情報が蓄積され、この情報が相手に渡されることによって決済が行われる電子マネーを、その残高情報の流通形態によってさらに細分化しようというものである。すなわち、オープン・ループ型とは、残高情報が個人や企業間を転々と流通していくことが可能で、情報の流通経路に限定的な終りがないパターンのものを指す。一方クローズド・ループ型とは、一回支払いに使われた残高情報は必ず発行主体に戻るパターン、すなわち残高情報が「発行主体→利用者→お店→発行主体」という閉ざされたループの中だけを動く場合を指す。現在、数ある電子マネーのプロジェクトの中で、このオープン・ループ型に該当するのは厳密な意味ではモンデックスだけであり、その他多くのICカードを使ったプリペイドカード型の電子マネーやeキャッシュなどもクローズド・ループ型に属するのである。そのような意味で現在の所、1.6のEの譲渡性を実現している電子マネーは、モンデックスだけと言えるのである。さて次に、上で分類した4つの電子マネーのそれぞれの特徴について、例をあげながら述べる。
2.2 「プリペイドカード型」電子マネー
近年のICチップ製造技術の進歩によって、数年前までは、ごくわずかな容量のメモリと貧弱な計算能力しかないものを1枚数千円もかけて製造されていたのが、現在では比較的高度な暗号処理を持ったICチップが数百円程度で製造可能になってきており、さらに最近のICカードには「耐タンパー性」という特殊な性質が備わっており、第三者がICチップのメモリの内容を勝手に読み出したり、書き換えたりすることが難しくなっている。プリペイドカード型はこのようなICカードを利用することで、テレホンカードやパチンコのプリペイドカードのような磁気カードにおいて頻発していた偽造を困難化させ、またATM等を使いカード内の残高を増やすことができ、使い捨てでない点など、従来のプリペイドカードよりも優れている。現在、富士銀行や第一勧業銀行等が東京の臨海副都心で行なっているインテリジェントICカードという電子マネーの実験もこれに属する。しかしながら、決済の仕組みは従来のものと大差がなく、個人間の支払いにも利用できず、さらにインターネット等を経由した支払いに対してもあまり想定されて作られていないため、eコマースに応用するのは難しい。このため、経済ないし社会に与える影響はそれほど大きいものになるとは考えにくく、電子マネーとして広く一般化するとも思われない。実際に見てきた上述のインテリジェントICカードの実験も、結局今の所はビル内の社員の間のみでの実験に留まっており、現金での支払いが大半を占めているという状態である。
2.3 「クレジットカード応用型」電子マネー
クレジットカードを利用した電子マネーは、2.1で示されるクレジットカード型の電子マネーの数の多さからもわかるように、インターネット上の支払方法の中で現在最も積極的に取り組みが進められている。そして、実用段階に最も近い、あるいはすでに実用段階に入りつつある入りつつある方法といえる。クレジットカードは、もともとキャッシュレス化の工夫の中で生まれてきた、ある意味で現金などと比べて、「進化」した決済方法といえる。クレジットカードで支払いをする場合、買い手は買い物の現場で自分のクレジットカードを提示し、署名を行う。売り手は買い手のクレジットカード番号と購入金額等の情報をクレジットカード会社に伝える。するとクレジットカード会社が、買い手の代わりに売り手に対して購入金額を立て替え払いしてくれる。この立て替え払いによって売り手と買い手との間の債権・債務が消滅し、決済が完了する仕組みになっている(もちろん後で、クレジットカード会社への支払いをする必要はあるが・・)。このようにクレジットカードによる決済は、クレジットカード会社という第三者を介在させるやや複雑な仕組みとすることによって、売り手と買い手の当事者間においては、クレジットカード番号(およびカードの有効期限等)という単純な情報を受け渡すだけで決済に必要な手続きを済ませることができるのである。こうしたクレジットカード番号等の情報のやり取りにおいては、物理的な媒体の移動は本来的に必要ではない。実際、クレジットカード番号を電話やファックス等で伝えることによって決済を行うケースもよく見られる。クレジットカード番号等の情報を電子的に受け渡すのは、セキュリティの問題を別にして、極めて容易である。このことが、電子マネーの実現に向けて、まずクレジットカードの応用が最も実用化に近く、先行して進められている最大の理由といえる。さらにこれに加えて、クレジットカードがすでに世界的に広く普及し、これを保有するカードホルダーが多数存在するというマーケットの大きさも見逃せない。世界的に見ると、VISAカードとマスターカードの発行枚数はそれぞれ約4億6500枚、約3億万枚にのぼる。日本は現金の利用が依然として盛んで、クレジットカードの普及が諸外国より比較的遅れているといわれているが、昨今の海外旅行ブームを契機にクレジットカードの普及が進み、1994年時点のクレジットカードの発行総数は2億枚を超えている。すなわち、これだけの数のカードホルダーが、インターネット上でもそのクレジットカード番号を入力するだけで支払いを済ませられるわけであって、eコマースの進展に与える影響は非常に大きいと考えられる。またクレジットカードが、いわゆるキャッシュレスの支払方法として、すでに社会で十分に認められる存在にまでなっている点も重要なことである。仮に、新たな電子決済方法の導入を議論するような場合、それが今までにないまったく新しい決済システムの導入となると、その法的な位置づけが不明確なことや、既存の各種の規制・制度への抵触といった面で障害となる部分が少なくない。たとえば、それが通貨と類似したような決済手段の発行という形態の場合、「国家の独占的通貨発行権への抵触」といった問題が当然発生する。また、顧客から前払いでキャッシュを払い込んでもらう場合、預金と類似の行為であるという観点から銀行等の金融機関に対する規制への抵触などが問題となる。しかしながら、クレジットカードはすでにキャッシュレスの支払方法として実用化が十分に進んでおり、これを電子マネーに応用するとはいっても、既存のシステムに則り、インターネット等の情報ネットワークを伝達媒体として新規に利用するにすぎないため、制的な問題を意識する必要はほとんどないといえる。以上のようにクレジットカードは、電子決済の実現に適した特徴をさまざまに備えているが、その一方で電子決済として実用・普及させていくためには、克服しなければならない問題がいくつかある。その中で最も重要なのがセキュリティである。クレジットカードの命はカード番号(および有効期限)等のカード情報である。この情報が悪意を持った第三者に盗まれてしまうと、組織的な犯罪集団によってカードが偽造され、不当な買い物に利用される可能性が考えられる。カードの正規の所有者、すなわちカードホルダーにしてみれば、ある日突然、まったく身に覚えのない買い物の代金請求が舞い込んでくることがないとも言い切れない。1994年度におけるVISAとマスターの偽造カードによる被害総額は約3億ドルにものぼっている。偽造カードやカードの不正使用犯罪の場合、顧客側に故意や不注意等の原因がなければ、その損害をカード会社が補填する仕組みにはなってはいるが、実際にはこれを立証することは難しく、顧客側が損害を負担しているケースが少なくない。インターネットの場合、その構造上、すべての電子情報が数多くのコンピュータ・ネットワーク間をバケツ・リレー的に転送される。すなわち、情報を発信するコンピュータと受信するコンピュータとが直結され、その間だけで電送されているわけではなく、両者の間に直接関係のないコンピュータがいくつか介在し、データを手渡していく。このため、情報伝達の過程にあるコンピュータの情報処理能力の向上により、たとえば多量の情報の中からクレジットカード情報と思われる部分のみをピックアップして、コピー、蓄積することも、専門家の間ではそれほど難しいことではなくなりつつあるようである。したがって、インターネット上でクレジットカード情報をそのままの形でやりとりするのは危険である。インターネット上でクレジットカードを利用した電子決済を実現するにあたっては、このセキュリティの問題を解決することが重要な課題となる。このセキュリティ確保のためにいくつかの方法が考案され、すでに実際に運用されている。たとえば2.1のAの中にあげられている、ファーストバーチャルの場合は、この問題をクレジットカードに関する情報をインターネット上ではいっさいやり取りしない仕組みによって解決している。つまり、この会社ではカード番号等の個人情報は事前に電話やファックス等で登録しておき、あとは顧客ごとに設定されるID番号と商品購入の確認のための電子メールのみをインターネット上でやり取りすることによって決済を実現していくのである。この決済の方法をまとめると以下のような利点を持っている。受することが可能である。
@この方法は仕組みが簡単であり、ID番号とその後の購入確認の電子メールで構成されているため、特殊な暗号技術等を用いず、決済処理のシステムの構築コストを低く抑えることができ、利用者にも安心感が与えられる。
A本当に買い物を行い、お金を支払う意志があるのかどうかの確認を電子メールによって、買い手に対して行われるため、支払拒否等のトラブル発生のリスクが小さくできる。
B顧客のクレジットカード情報はファーストバーチャルのみが保管し、売り手は顧客のID番号のみを受け取るため、売り手によるクレジットカード情報の悪用が防止できる。
C売り手がクレジットカード会社の加盟店でなくても、クレジットカード決済で代金を受け取るという恩恵を享受することが可能である。
しかしながら、一方で欠点も存在する。それは、いちいち電子メールを介した情報の授受や意志確認等を済ませてからでないと売買が実行できないため、リアルタイムでの売買実行ができないという点である。ファーストバーチャルは大変シンプルな仕組みによってインターネット上でのクレジットカードによる決済方法を実現したが、このようなデメリットを持つ点で、不十分さが残っている。またこのほかに、リアルタイム性をもった電子マネーとしては、サイバーキャッシュなどがある。この仕組みはファーストバーチャルと同じクレジットカード決済を利用したサービスであるが、「サイバーキャッシュ・ウォレット」と呼ばれる専用の顧客決済ソフトを利用することにより、第一に、暗号技術を用いてクレジットカード情報を直接インターネット上でやり取りすること、第二に、クレジットカードによる支払手続きがインターネット上でリアルタイムで完結するということを実現したことでファーストバーチャルの方式と大きく異なっている。もちろんこの決済方法の実現のためには近年の暗号技術の発展によって生まれた、強力な暗号の利用が不可欠である。これら以外にも、VISAやマスターが電子マネー技術の開発を進めており、今後の発展が見込まれる決済方法と言える。
2.4「預金通貨利用型」電子マネー
この預金通貨利用型は、振り込み等の決済方法を電子的に行うことで実現しようとする電子マネーのことである。この振り込みをインターネット上で実現させるのが「インターネット・バンキング」である。これは、預金口座の開設、残高照会、決済性預金と貯蓄性預金との間の振り替え、他の口座への振り込みといった一連の預金関連サービスをインターネット上で実現しようとする試みである。インターネットのようなオープンかつ不安定な側面を持つネットワーク上でこのようなサービスを提供するには、セキュリティの確保が難しいといわれるが、近年の暗号技術等の発達により実現可能となってきた。それでは、預金通貨利用型の電子マネー、つまり、振り込みという決済方法が、インターネット上で利用できることの意義とはなんなのであろうか?それにはまず、クレジットカードの利用と比べた場合、利用可能者の裾野が広がる点が最も大きい。前の2.3で述べたように、クレジットカードはすでに十分に普及し、その利用者は相当多数にのぼってはいるが、やはりその性質上、ある程度の信用力を持った人しかクレジットカードを保有できず、子どもや学生、収入が不安定な人等は基本的にクレジットカードを持つことができない。また、クレジットカードによる支払を受け取るためには、カード会社と特殊な契約を結んだクレジットカードの加盟店にならなければならない。その際、カード加盟店になるにも、一定の基準を満たしていなければならないほか、手数料を支払う必要もあり、だれでも簡単かつ気軽に行えることではない。したがって、クレジットカード型決済という方法は、個人間の決済にはあまり向いていないのである。これに対して、振り込みを行ったり、振り込みによる支払を受け取ったりするためには、単に銀行に決済性預金の口座を開設すればよい。口座の開設は通常、身分証明書等があれば、だれでも手軽に行えるものであり、クレジットカードの利用者や加盟店になるよりもはるかに容易である。このため、振り込みによる支払い、および振り込みによる支払の受け取りができる人は、クレジットカードの場合よりもはるかに多く、個人間の決済も可能である。ただし、こうした利点を持つ振り込みにも欠点がある。振り込みの処理は、そもそも銀行に直接指図を出し、これを受けて銀行が帳簿を書き換えるという手続きを踏むことになるため、どうしても銀行のシステム上の制約に大きく左右される。たとえば、日本の銀行のシステムの場合、特に利用時間帯の制約が大きな障害としてあげられる。日本の銀行では、一般に営業時間(ふつう平日に午前9時から午後3時まで)の中でしか振り込みは受け付けられない。ATM等を使えば午後3時以降に振り込みの指図を出すこともできるが、実際の処理は翌営業日の営業時間に入ってからになる。仮に、インターネット上で振り込みの指図ができるようになっても、少なくとも当面は、ATMと同様の制約を受けることになる可能性が高い。これではインターネット上で夜間に注文を受けたお店は、翌営業日になるまで代金受け取りの確認ができず、商品やサービスを即座に提供することができない。また、振り込みの場合、国境を越えた支払いには向かないという欠点もある。代金の支払人の取引銀行と受取人の取引銀行が異なる国に存在する場合、現行の銀行間システムでは、電信送金という最速のサービスを利用しても、振り込みの指図を出してから実際に入金が行われるまでには、最低1日くらいのタイム・ラグが発生することは避けられず、送金にかかるコストも馬鹿にならない。これらの欠点を考えると、振り込みが比較的電子化に向いた決済方法であるとしても、eコマースで利用するには少々問題が残る。その点小切手は、振り込みの処理等と違いオフライン決済をほぼ実現しているため、銀行のシステムの可動時間等の制約にとらわれずに、当事者間でいつでも決済が行えるという利点を持っている。決済額が小額で、不渡り発生のリスクがさほど心配する必要がない場合、夜間であろうと、休日であろうと、インターネット上で注文を受けたお店側は、小切手を受け取ったらすぐさま商品やサービスを提供できる。ただし、小切手の欠点は、やはり不渡りの危険性を完全には払拭できないことにある。たとえば、支払人が振り出すことのできる小切手の金額に上限を設定し、一定額までは支払人側の銀行が小切手の支払いを保証する等の工夫が施されなければ、十分に安心して電子マネーの決済方法として利用することはできない。このような現状の中、アメリカではインターネット上で各種金融サービスの提供を行っている銀行が100行近くある。しかしこれらの銀行の大半はいずれも会社案内や、金融に関する各種ニュースの提供といったところで、個別顧客に対する実際のバンキング・サービスが実施されているところはまだ少ない。また、バンキング・サービスを行っているところでも、クレジットカードやローンの申し込みや、残高照会に限定されたものがほとんどである。そのような中で、SFNB(セキュリティ・ファースト・ネットワーク・バンク)は、インターネット上でのみ店舗を有し、本格的にバンキング・サービスを行っている数少ない銀行である。また、このようなSFNBのインターネット・バンキングのように、インターネット上で直接銀行に対して振り込みなどの指図を出して預金通貨を移動させる方法のほかに、利用者と銀行との間に、何らかの仕組みをかませることにより、預金通貨の移動を便利にしたり、相対的に低コストで行う電子決済方法がいろいろと考案され、実験が進められている。たとえば、アメリカの大手銀行が中心となってインターンネット上で利用できる電子的な小切手の実用化を目指して本格的な研究を進めているFSTCによるエレクトロニック・チェック・プロジェクトなどがある。これは、基本的には、暗号技術を応用して小切手の内容(支払人や支払金額等のデータ)を電子メールを使って送受信することによって決済を実現しようとするものである。またこのほか、支払いに関する明細データ(この小切手が何の支払いのために振り出されているのかを説明するデータ)も、小切手と一緒に送信できる形態が想定されており、将来、いわゆる金融EDIを実現し、売掛債権の回収状況のチェックを自動化することも考えられている。この決済方法を具体的に説明すると以下のようになる。
@まず消費者は、支払明細データ、小切手内容データ、小切手内容データを消費者の秘密鍵で暗号化した結果である消費者の電子署名、消費者の名前や公開鍵等を消費者の取引銀行の秘密鍵で暗号化した「証明書1」、消費者の取引銀行の銀行名や公開鍵等を中央の認証機関(FRB等の公的な機関など)の秘密鍵で暗号化した「証明書2」、という合計5つの情報をひとまとめにして電子メールで商店に送付する。
Aこのデータを受け取った商店では、まず、もともと保有している中央の認証機関の公開鍵によって「証明書2」の暗号を解き、これにより商店は、中央機関が正しいものであると証明した、消費者の取引銀行の公開鍵を入手できる。次にこの公開鍵で証明書1の暗号を解き、消費者の取引銀行が正しいと証明した、消費者の公開鍵を入手できる。さらにこの公開鍵を使って、消費者の電子署名の暗号を解き、その結果が、一緒に送られたもともとの小切手の内容データと同一であることを確認することにより、この小切手内容データが途中で改竄等が行われていない正当なものであることが確認できる。
Bこうした確認作業を経たうえで、商店は消費者から受け取ったデータ全体を自分の秘密鍵で暗号化することにより、電子署名による裏書きを作成する。商店は消費者から受け取ったデータに、この裏書きと、商店用の証明書を添付して、商店の取引銀行に電子メールで送付する。
C商店の取引銀行と、消費者の取引銀行の間で、小切手内容データの正当性を確認した上で、消費者の取引銀行が消費者の当座預金を引き落とし、商店の取引銀行が商店の当座預金に入金記帳を行うことで決済が完了する。
このエレクトロニック・チェック・プロジェクトでは、以上のような電子署名を応用した改竄の防止のほかにも、セキュリティを高めるためのいくつかの工夫が施されている。たとえば、消費者や商店はそれぞれ自分専用で第三者が中身を見ることが難しい構造になっているICカードを持っており、この中に自分の秘密鍵が格納されている。このことにより、第三者が消費者や商店の電子署名や裏書きを偽造することが困難になっている。また、商店が消費者から受け取ったデータをコピーして蓄積しておき、同じ小切手で2回や3回も換金を請求するような不正使用を防ぐため、小切手データに発行日をつけて、換金が受け付けられるまでの期間を短く設定したり、消費者の取引銀行が支払い済みの小切手情報を蓄積しておくことで、同じ小切手データが二重使用されていないかどうかを確認するような対策が施されたりしてあるのである。
2.5「現金通貨模倣型」電子マネー
1.3において、現在この世にある電子マネーと呼ばれるもののほとんどは、「新たな通貨」ではなく、「新たな決済方法」であると定義したわけだが、今後、まさに「新たな通貨」となりうる可能性を持っているのが、この現金通貨模倣型の電子マネーである。2.1のCにあげられているeキャッシュやモンデックスがその代表的なものである。先にあげたクレジットカード応用型や預金通貨利用型などの、電子的決済方法の実現による電子マネーよりも、これらのような現金通貨の代替をする、希少性のある決済手段の実現を目指す電子マネーが優れている点は、決済の匿名性が実現できるということである。クレジットカード応用型の場合、第三者による与信と立て替え払いという行為が介在するため、決済ごとの支払人と受取人が必ず特定され、このデータを第三者が少なくともある一定の期間は保管することになる。預金通貨利用型の場合も、すべての決済処理が預金を管理している銀行の帳簿書き換えという事務処理を通じて実行されるので、個別決済ごとのお金の出所と行き先が必ず銀行に把握されることになる。これらに対して現金通貨模倣型の場合、決済の当事者同士の間だけにおいて、分散処理かつオフラインで決済されるため、お金の流れを第三者が管理し把握する必要がない。普段使う現金のように匿名性が保たれるのである。また現金通貨模倣型では、このように分散処理かつオフラインで決済処理が実行されることから、基本的には、クレジットカード会社や銀行のような第三者による何らかの管理システムにいちいちアクセスする必要がなく、このためクレジットカード応用型や預金通貨利用型と比較して、通信コストを低く抑えることが可能になり、それにより個別決済ごとのコストの低減につながり、手数料が抑えられ、ごく少額の決済にも利用することが可能になってくる。また、クレジットカード応用型では不可能だった個人間の支払いも可能になる。さて、以上のような特徴を持つ現金通貨模倣型の具体的な仕組みを、代表的なeキャッシュとモンデックスを例に見てみると、まずeキャッシュは、オランダのデジキャッシュ社が開発した電子マネーであり、完璧な匿名性を持っている特徴を持った、パソコンが接続されたネットワークにおいて利用され、電子マネー自体はパソコン等のハードディスクに保管される形式をとる「ネットワーク型電子マネー」である。このeキャッシュを利用した場合、それが市場においてどのようなルートで流通したか、という情報がまったく記録されないので、利用者本人以外には、デジキャッシュ社を含めた第三者によってその流通経路を把握することが不可能になっている。利用者のプライバシーの保護という点で、非常に優れた特質を持っているのである。実際にeキャッシュを使用するためには、マーク・トウェイン銀行に預金口座を開設し、その口座に預けられているリアル・マネーをeキャッシュに変換し、自分のパソコンのハードディスクへ引き出して使用するのである。そして、引き出したeキャッシュでインターネットのWWW上の小売店で購入する手順は、まず、eキャッシュの使用できるホームページにアクセスし、その画面に表示されるさまざまな商品の中から購入したい商品を選択する。するとあらかじめインストールされたeキャッシュ用のアプリケーション・ソフトが自動的に起動し、その商品の購入の意志を確認してくるので、そこで「PAY」というボタンを押し、購入を決定すると、代金に相当する額のeキャッシュが購入者のパソコンのハードディスクから払い出されて支払いが完了するのである。また、このeキャッシュのソフトを使うと、過去の支払いの記録や自分のパソコンの中に保管されているeキャッシュがどのように構成されているかという情報を、1セントが何枚、10セントが何枚というように表示させることができる。さらに、eキャッシュはこういった買い物の他に、ンターネットを通じて個人間の決済を行なうこともできるのである。しかしながら、eキャッシュはハードディスクに納められた数字の羅列というデジタルデータであるため、第三者にその数字の羅列の仕組みを解読されてしまうと、勝手に新しいeキャッシュが製造されてしまう恐れが生じる。そこで、これを防止するために、紙幣にそれぞれ押されている銀行の印鑑のように、暗号技術を応用した「ブラインド署名」というものが施されているのである。さらに、eキャッシュそれぞれにシリアル・ナンバーがついており、一度使用されたeキャッシュのシリアル・ナンバーは銀行に登録され、つねに使用されるeキャッシュは過去に使用されたeキャッシュのシリアル・ナンバーと比較し、二重使用されていないかチェックされているのである。つまり、eキャッシュは何度も使用できる紙幣や貨幣と違い、その二重使用を防止する仕組みのために、つねに一回しか使用できないのである。この点で、eキャッシュはまだ完全に現金通貨を模倣したものとはいえないのである。このような特徴をもつ「ネットワーク型電子マネー」のeキャッシュに対して、モンデックスはICカードをベースとした電子マネーで、電子マネー自体がICカード内のメモリに保管される「ICカード型電子マネー」といえる。
3.2電子マネーの法制度上の問題点
電子マネーの法制度上の問題点としては、電子マネーを直接に規定するような法律や規制が、日本はもちろんのことほとんどの国で存在しないことがあげられる。特に日本では、お役所的な所が強く、法律に規定されていないことを進めるのには大変時間がかかる。その中でも銀行に対する規制はとりわけ厳しく、この点が日本で電子マネーへの取り組みが遅れている原因と考えられる。もちろんこのような傾向は多かれ少なかれ、他の国でも起こっていることである。そのような中でアメリカでは規制に見切りをつける金融機関も出始めている。たとえば、オランダの大手銀行と大手保険会社が合併して誕生した、世界的に銀行、証券、保険を営むユニバーサル・バンキングを展開しているING銀行は、銀行免許を維持していると、規制のために十分にユニバーサル・バンキングの特性を生かせないという考えから、銀行免除を返上したうえで、ノンバンクの持ち株会社となって活動している。もっとも、アメリカでは銀行免許を返上して非銀行になっても金融業務は行なえるが、日本では非銀行の銀行業務は認められていない。しかしながら将来、eコマースの世界的な規模での取引が発達すれば、このような動きが世界の国々で出てくるかもしれない。さて一方、現在の日本の電子マネー議論を見てみると、特に目立って取り上げられる法律として「紙幣類似証券取締法」というものがある。明治39年に制定されたこの法律では、紙幣と似たような機能を果たすものは、その発行や流通を政府が禁止できるということが定められている。この規定を規定を破ったものに対しては、禁固や罰金といった罰則が科せられ、紙幣と似たような機能を果たすもの、つまり紙幣類似証券は政府によって没収されてしまうのである。この法律は、政府や中央銀行が管理する通貨以外の通貨が普及し、利用されると、国民経済に無用な混乱を招く恐れがあることから、国家ないし中央銀行による通貨の独占発行権を保護するために制定されたものであり、それなりに意義のあるものではあるが、「紙幣類似の作用をなすもの」というように、規制の対象があいまいである点に問題がある。たとえば、現在のトラベラーズ・チェックやデパートの商品券等もだいぶ紙幣と類似しているものだが、この法律には引っ掛かっていない。電子マネーについていえばどこまでこの法律に触れるのか見極めが難しい。この他にも最近、富士銀行などが東京の臨海副都心で行なっている電子マネーの実験は、プリペイドカード型に分類されるものであり、これは「前払証票の規制等に関する法律」、通称「プリペイドカード法」に当てはめて運用されているが、実際に広い地域での使用する場合は、この法律の延用だけでは問題が生じる。また特に現金通貨模倣型の電子マネーは、現在の所、その発行主体はモンデックスのように、銀行に限定されているが、将来的に銀行にまったく関係ない所が発行主体になり、個人間や企業間の決済手段として利用できる電子マネーのサービスを行なった場合、「銀行法」における為替業務に抵触することになってしまう。これら以外にも、「外為法」に、電子マネーで海外とのクロス・ボーダーな決済を行なう場合、各種規制の対象になるかというような問題や、そもそもインターネット上では決済がどこで起こっているのかということさえはっきりしないため、日本の法律で規制できるのか?という問題さえ出てくる。これらの問題を解決するためには、現在、郵政省、大蔵省、通産省などでバラバラに行われている電子マネーの取り組みを早く一本化し、柔軟な対応で検討をかさね、法改正を行なっていく必要性があると考えられる。
3.3電子マネーの金融制度上の問題点
金融制度上の問題点、特に銀行等にどのような影響を与えるだろうか?まず考えられるのが、電子マネーが普及することで、中央銀行による貨幣供給のコントロールを困難にするのではないかといった問題である。これらの点は実際、現在の実験の段階では推測がむずかしく「やってみなければわからない」という部分が大きいのだが、実際プリペイドカードの導入の時も同じような議論が起きたが結局それほど問題なかったという例もあり、また、2章でも述べたように現行の電子マネーの制度は、クレジットカードや預金通貨などを利用した決済方法という性格が強い為、必然的に銀行が最終的に介在する形となることもあり、またこのような新しい決済方法が金融政策に与える影響の度合は、どの程度普及し、どの程度利用されるかによるところが大きいので、これらの電子マネーについても、少なくとも当面は、金融政策への影響を心配するほど経済活動の中で大きな比重を占める存在になるとは考えにくいと思われる。たしかに、ある銀行の試算によると、西暦2000年の日本の電子マネーの市場の規模は5兆円、世界では50兆円となり、また他では、5年以内にアメリカでは銀行の店舗の半分が閉鎖され、40万人が職を失うともいわれているが、反面、もっとも実用化が進んでいるといわれるモンデックスは、当初の予定を大幅に下回る1万人程度の利用者に留まっているという現状もある。小切手社会といわれる欧米に対して、ATMの普及した日本では、どこでも現金が下ろせる利便性も有り、やはりそれほど急激な電子マネーの利用の増加は有り得ないと思われる。また、ある程度利用が伸びたとしても、まったくの通貨の代替的な電子マネーに置き代わるとは考えにくく、クレジット応用型等との併用が主流となると考えられ、銀行に与える影響も、手数料収入が多少減少することはあるかもしれないが、店舗半減などということはないと思われる。また将来、民間主体で電子マネーの発行が行われる場合がおきたとしても、その電子マネー発行残高と同額の準備預金を中央銀行に常に預けるように義務づけるなどといううな措置をとり、信用創造をゼロにすることで、事後的ではあっても、電子マネーの発行量を完全にコントロールすることも可能だと思われる。実際、モンデックスはこの方法で発行を行なっており、貨幣供給に影響を与えない方策をとっている。逆に、以上のような金融制度上の危惧は電子マネーが現在の現金通貨、預金通貨の相当部分と取って代わるように存在になってから考えればいいわけであり、まずは規制を強化する事を考えるのではなく、いろいろな電子マネーの実証実験をどんどん行なって、より安全で利便性のある物を造り出していく努力を促していくべきなのだと思われるのである。
第4章まとめ・・・電子マネーの将来像
この論文を書いている最中に、モンデックスがクレジットカード会社の大手であるマスターカードの傘下に入るというニュースが入ってきた。この話は前々から噂になっていたことだったが、このことが実現したことは、電子マネーの実用化に対して大変影響を与えることである。第2章にあげたような各種の電子決済方式の電子マネーは、それぞれ利点と欠点を持っており、利用料金額やプライバシー等の観点からそれなりの適用領域を持ち、住み分けが行われると考えられる。たとえば、クレジットカードによる電子決済は100万円から1000円程度の個人の比較的高額な支払いに用い、もう少し少額な数円単位までの支払いは手続きの簡単な現金通貨模倣型が利用されるといった具合である。今回の事実上の吸収合併により、以上のような使い分けの機能を持った電子マネーの実現が現実的なものになり、さらに、モンデックスの普及において課題であったカードリーダーなどの専用端末の各小売店への普及の問題も、既存のマスターカードの加盟店にある機器のある程度の変更によって実現できるため、一気にモンデックスを普及させることができ、マスターカードが世界における電子マネーの標準規格を握る可能性が大いに出てきたのである。まだまだ、電子マネーの技術は、試行錯誤の段階を完全に脱した状態にあるわけではないが、多くの政府や企業の努力により、徐々に実用化の道を進み、より便利で簡単な決済方法の実現に近づいていると考えられるのである。(http://www.shiojiri.ne.jp/~goro/soturon.html)
考察 現在、ネットワーク関係のプロジェクトでも、こんなにたくさんあることを 初めて知りました。道路の交通や携帯電話などは結構多くの企業で取り組んで いるのは知っていたのですが、通信衛星や列島縦断型などは、あまり興味がな かったので知らなかったです。これからもますます発展していくであろう通信 ネットワークについてもっと就職活動を通して勉強をしていこうと思いました。