科学論文の読みかた(特に英語論文)
(内部向け)
はじめに
私は英語教員ではないので、決してここに書いてあることが全て正しいとは思っていないのですが、 今までに指導教員や先輩たちからもらったアドバイスをまとめてみました。
英語論文を挫折せずに読み通すには?
几帳面に、頭から英語論文を読んでいくと、ほぼ間違いなく途中で挫折する。英語の科学論文を指導教員から渡されて、効率的に内容を理解する方法を述べる。
ここまでで、その論文のおおよその内容は分かったはず。
- まず、読むべき論文をゲットする。
- 次に、タイトルと著者を眺めてみる。知ってる人が著者の中にいたら、「おお」と感心してみる。
- アブストラクト(概要)を読む。何が書いてあるかおおよそつかむ。
ただし、よほど論文のテーマに詳しく無い限りアブストラクトだけで中身を理解するのは難しいので、この時点で分からなくても気にしない。
- イントロダクションを読む。どの著者も、過去の研究のレビューなど一生懸命に時間をかけてイントロダクションを書くので、 特に初学者にとっては、良い論文のイントロダクションを用いて過去の研究の流れを掴むと良い。
- 論文最後の結論または要約を読む。この論文を読み終えた暁には、そこに書いてあることが理解されたことになる。
- 図を見て理解する。必要に応じて、図のキャプションやその図が解説されている本文箇所を読む。
もし、その論文において、これから自分が解析しようとしている方法が述べられているなど、 自分にとって特に重要な論文なのであれば、上記の作業の後にもう一度本文を読んでいけばよい。
もし、新着論文のチェックなのであれば、上記の作業で十分であろう。
英文を読むこと自体が苦手な人へ--単語と文法のススメ
少なくとも英語論文に関して、分からない/読めないのは、であろう。以下に傾向と対策を示す。
- 論文に書かれてある分野を良く知らない
- 単語・熟語を知らない
- 文法(構文)を知らない
論文に書かれてある分野を良く知らない
これは、英語以前の問題として、日本語の教科書である程度勉強してその分野の知識をまず身に付けることをお勧めする。
ただし、これをやっているといつまで経っても英語の論文を読むことができないので、 英語の論文を読んでみて、分からなければ適宜教科書に戻るなどの作業が必要であろう。
単語・熟語を知らない
ある程度の数の科学英単語については、知識として身に付けることが必要。 辞書をすぐに引く癖を付ける。最近は、ネットでも検索ができる。 お勧めなのは、また、日本語となっている外来語の中には、元の意味とずれている単語があることが多い。 そういった単語は、誤読の元になるので注意する。 動詞は、ある特定の前置詞を伴って特定に意味を成すことが多い。このような熟語も覚えておく。
- goo
英和・和英・国語辞典が利用可能。専門用語は載ってないことも多い。
- アルク(イチオシ!)
単語に限らず、英語独特の表現などの例が豊富。こんなに便利なものがタダで使えるとは素晴らしい。英文を書くときにも重宝する。
さらに、特殊な動詞の用法があることがある。例えばmake。make A Bで、AをBにする、など。
このような特殊な使い方をする動詞はそう多くないので、用法と一緒に覚えると良い。
文法(構文)を知らない
科学論文を読むのに必要な文法・構文はそれほど多くない。中学レベル+アルファで十分。
重箱の隅をつつくような文法は、私も忘れてしまった。
五文型の理解
文の語句を、主語(S)、述語(V)、補語(C)、目的語(O)、それに修飾語(M)という成分に分解する。
分解したら、以下の五文型のいずれかに当てはまるはず。1.SV, 2.SVC, 3.SVO, 4.SVOO, 5.SVOC
ただし、Mは文型を構成する成分の中には入れない。なぜなら、Mが無くても最低限意味のある文が成り立つからである。
上記の各成分は、究極的には一語ずつまでに分解できるが、修飾語を含む主部、述部、・・・というように、 ひと塊で捉えるようにすることは良い。
その場合でも、上の五文型のどれかに当てはまるはず。
自動詞と他動詞の区別(英文を成分ごとに分解する上で重要)
ある動詞がどういった構文で用いられるか?を考えるとき、その動詞が自動詞と他動詞のどちらかを知っておくことは、 英文を解釈する上で重要な情報となる。自動詞とは目的語を取らない動詞で、他動詞とは目的語を取る動詞。 目的語を取る、と言うのは、動詞の後に前置詞など無しで直に名詞を置くことができるということ。
例えば、goは、普通は(「行く」と言う意味では)目的語を取ることができない。 従って、例えば
I go a school.
とは言えない。goは、直に名詞を後に取ることができないからである。枕代わりに、a schoolの前にtoなどの前置詞を付けて
I go to a school.
としなければならない。このとき、
I(S) go(V) to a school(M).
と分解することができ、to a schoolは動詞goを修飾する修飾句であることが分かる。このように、文を成分ごとに分解する上で、ある動詞が他動詞と自動詞のどちらかを知っておくことは重要。
ただし、一つの動詞が他動詞と自動詞の両方になることがある。その場合、自動詞か他動詞かで意味が異なる場合があるので、注意が必要。
逆に、目的語を取っているか取っていないかで、その動詞の意味を推定することができる。
関係代名詞
特に、which ...、that...が多い。
to不定詞
これは、あまり難しくないのでは?
動名詞
動詞にingを付けて名詞化できる。「〜すること」と言う意味になる。分詞構文
もともと接続詞で結ばれていた文の主語を省略し、現在分詞・過去分詞に変えることで、修飾句にする。
文の前、または後に置かれる。文の前後にいきなり「〜ing」とか「〜ed」という動詞が現れてきたら、コイツだと疑おう。
強調構文
頻度は多くないが、知らないと全く意味が取れないことになる。なぜなら、普通の文法を完全に無視した構文だから。
強調したい語や句、節などをIt is〜that・・・の、「〜」の中に強引に入れることによって、その語句を強調する。手っ取り早い理解の仕方は、It is、thatを取っ払ってみるとよい。
It is them that I want to meet. --> them I want to meet. --> I want to meet them.
この場合、meetの目的語であるthemを強調するために、themが前に持って行かれてしまい、さらにIt isとthatの間に挟まれている。
残されたmeetは、他動詞なのに目的語を失い、最初に説明した五文型は完全に無視された形となる。 日本語だと、「私が会いたかったのは、(それは)彼らです。」という感じ。